2012年3月2日金曜日

きゃりーぱみゅぱみゅ「CANDY CANDY」から日本の「カワイイ」のルーツを想う

日本人として日本にいるとあたりまえで面白味を感じないようなものでも、海外から見るとユニークなものがたくさんあるということを僕たちは知っています。

つい数年ほど前には「ガラパゴス」などと揶揄する流れもありましたが、そのように海外から日本の個性を認められることに喜びを感じている日本人は多いと思います。

キャンディもまたそうした日本の個性のひとつです。外見も美しく、清潔なパッケージで、美味しい。品質の良い日本のお菓子にハマっている外国人は多いと聞きます。

日本のキャンディを月2回届けてくれるというフィンランド発祥の「Candy Japan」という面白いビジネスがあるそうです。ごく小規模にはじめたスモールビジネスでしたが、たった半年で3万6000ドル(276万円)を売り上げました。



さて、この度、きゃりーぱみゅぱみゅの新曲「CANDY CANDY」が発表されました。

きゃりーいわく「甘党な女の子の歌」と言われるこの楽曲は、その名の通り机やポケットやカバンの中に忍ばせた甘~いキャンディ」を歌った楽曲です。



ところで「キャンディ」という言葉を聞くことは、なんだか少なくなったような気がしませんか? 統計があるわけではないのですが、商品名などに「キャンディ」という言葉が減って、「アメ、飴」などに言い換えられていることが多いような気がしています。「のど飴」ブームのせいかもしれません。

そもそも厳密には、キャンディ=飴ではないと知っていましたか?

僕たちが普段「飴(あめ)」と呼んでいるもののほとんどは、いわゆるハードキャンディのというもののひとつ、いわゆる「ドロップ」です。

砂糖や水飴を主原料として固めたものをキャンディといいますが、その中にはキャラメルやヌガー、マシュマロやゼリーなどのソフトキャンディも含まれています。僕たち日本人には馴染み深い森永製菓の「ハイチュウ」などもそうです。

しかし日本人が「キャンディ」と聞いて思い浮かべるのは、あのハードキャンディタイプの「飴(あめ)」ですよね。それはもともと日本で最も親しまれてきたキャンディが、あの飴だからなんです。

古くは神への供物ともされた「飴」は、日本書紀にも記述があるほど歴史の古い食べ物です。

その飴のことをキャンディと呼んだりするようになったのは、明治以降のこと。このころは次々と西洋の文明が輸入されていたころで、特に洋菓子の名前などはもっとも庶民の心を惹くおしゃれなものでしたから、キャンディという呼び名もすんなり定着したのでしょうね。ちなみに昔は「キャンディ」ではなく、「キャンデー」と呼ぶことのほうが多かったようです。

「チョコレートやドーナツ、プリンなど横文字の甘いもの」と「女の子」のイメージの組み合わせが完成したのはいつごろなのでしょう?

きゃりーいわく新曲のPVは「80年代のおっちょこちょいな魔女っ子」風だそうですが、この80年代のころはやはり(特に女の子たちは)「飴」のことを「キャンディー」と積極的に言い換えていたんじゃないでしょうか。

今回、中田ヤスタカが「キャンディ」を新曲のモチーフに選んだ背景には、もちろん音楽的な理由(キャンディという発音)、それから彼が今までに「甘いもの」をテーマに作ってきた多くの楽曲の存在があるだろうと推察できます。

ただ、それだけではなく「キャンディ」という言葉のニュアンスが大事なのではないかと思うんです。

日本に昔からある飴だまを、かつて日本の女の子たちは欧米に憧れてキャンディと呼びかえました。しかしその後、日本では様々なもっと可愛いお菓子が次々に流行りました。ワッフル、エクレア、ナタデココ。キャンディという呼び名は、いつしかもとの飴(あめ)に戻り、女の子の可愛さを表現できることばから抜け落ちていきました。

しかし、いま、それをあえて。

「きゃりーぱみゅぱみゅ」の海外デビューライブを飾った、日本の「カワイイ」を拡張するためのプロジェクト『RUNE BOUTIQUE』(ルネ・ブティック)は、1960年代から70年代に活躍した内藤ルネさんのイラストを基本にしています。

もちろん、きゃりーぱみゅぱみゅのアートディレクションを手がける増田セバスチャン氏がプロデューサーです。


「RUNE BOUTIQUE」のキービジュアルの中で、モデル4名がそれぞれルネのキャラクターを演じるのですが、きゃりーぱみゅぱみゅが扮したのは「CANDY」という名前のキャラクターでした。

欧米に憧れて横文字をさかんに取り入れた時代――昭和の時代の内藤ルネ的な感性が、実は海外でいまもっともアピールできる日本の「カワイイ」のルーツである――

その思想を踏まえて、いまもっともきゃりーぱみゅぱみゅにふさわしい、「カワイイ」のニュアンスを、もっとも的確に表現するのが、「キャンディ」という単語なのではないでしょうか。

ちょっとちょっとほんのちょっとで 幸せはうまれて
甘い空気がふわふわ プンプンしなくて 済むでしょ 
CANDY CANDY CANDY CANDY CANDY
SWEETIE SWEETIE GIRLS LOVECANDY 

ワーナーミュージック・ジャパン
発売日:2012-04-04